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食品安全情報blog暫定後継サイトです

小林製薬の紅麹関連食品の回収事案について

問い合わせが複数来ているため、抑えておくべき基本情報を掲載しておきます。

これらのことをふまえたうえで話をしたいと思います。

随時追記します。

 

  • まず今回の健康被害の全貌や原因究明については厚生労働省からの発表を参照してください。それ以上のことは確実な情報ではなく想像が入ります。

厚生労働省

健康被害情報 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 

  • 医薬品と健康食品の制度などはこちらを一読してください

「健康食品」のことがよくわかる本|日本評論社 (nippyo.co.jp)

機能性表示食品制度ができたころに書いたものですが、「フランスのニュートリビジランスシステムと紅麹」という章で現在の状況をおそらく一部は予言しています。

Foocomでその部分を紹介しています。

紅麹サプリ問題を2016年の著書で警告(畝山智香子さん) – FOOCOM.NET

 

  • 海外規制機関情報

紅麹についての海外情報のうち上述のフランスの意見以降で重要なものをリンクします。いずれも紅麹サプリメントそのもののリスクを指摘しています

 

[BfR]コレステロールを下げる疑わしい方法:紅麹を含むフードサプリメントは医師の助言でのみ使用すべき

A questionable way to lower cholesterol: food supplements containing red yeast rice to be taken only on medical advice

05.02.2020

https://www.bfr.bund.de/cm/349/a-questionable-way-to-lower-cholesterol-food-supplements-containing-red-yeast-rice-to-be-taken-only-on-medical-advice.pdf

 

 

[EFSA]紅麹のモナコリンの安全性についての科学的意見

Scientific opinion on the safety of monacolins in red yeast rice

EFSA Journal 2018;16(8):5368 3 August 2018

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5368

 

  • 健康食品は健康な人が使うもの

上記と関連しますが、健康食品は病気の人が使うことを想定していません。そのため病者での安全性や他の医薬品との相互作用などの情報は考慮しません。しかし実際にはほかの薬を使用していたり、本人が気がつかないだけで肝機能や腎機能になんらかの問題がある人が健康食品を使うことがよくあります。高齢者ならなんらかの機能低下はあるのが普通でしょう。そういう条件でも薬が使えるのは医師の管理下にあるからです。

 

  • 次に小林製薬の紅麹製品について、現在わかっていることをいくつか指摘しておきます。

✓製薬会社だから信頼していたのに、という声について

一般的に「製薬会社」といった場合、日本製薬工業協会加盟71社を連想すると思います。

会員会社 | 製薬協とは | 日本製薬工業協会 (jpma.or.jp)

これは新薬を開発できる会社です。

次にしばらく前に不祥事で話題になっていたジェネリック医薬品メーカーが加盟する日本ジェネリック製薬協会というのがあって、ここまでが医師が処方する薬を作っているメーカーです。

そして小林製薬はどちらでもなく、日本OTC医薬品協会に加盟しているようです。

会社の報告書を見ても、とにかく早く販売することを目指し、研究開発費よりも広告宣伝費のほうが多いという、一般的な製薬会社とは言い難い会社だと思います

KobayashiS_ar_2021_japanese_a3.pdf

 

✓「不純物」について、医薬品と食品の違い

医薬品の場合、有効成分以外の賦形剤も含めて含まれる物質とその分析法はすべてわかっている中で不純物を見つけることになるので「入っているはずのないもの」を見つけるのは理論的には可能です。

一方健康食品の場合、もともとロットによって組成が異なる可能性のある未知の化合物の塊の中で、有効成分とされるもの(とその他一部)だけがわかっているものの中から「イレギュラーなもの」をみつけることになるので何を探せばいいのかすら怪しいです。一部しかわかっていないのにあたかもすべてわかっているかのように宣伝するのが食品の効果効能界隈ですよね?リンゴには食物繊維が含まれるのでどうこう、といった主張をみると、リンゴに含まれるそれ以外のものはぜんぶわかっているんですか?と訊きたくなります。某健康食品会社の苦情受付では、その健康食品の有効成分とされるものの情報を根拠に、その症状はおこりえない、と苦情を却下しているとの話があります。その健康食品に含まれるものは、重量から言って有効成分以外のほうが多いのに。〇〇抽出物とか△△エキスというものの中味を私たちは知りません。

 

消費者庁への届け出情報

・食経験について

豆腐ようのような紅麹を利用した食品があったとしても、それをサプリメントとして毎日摂取する、というのは別物です。食経験は一般的な食事の一部として食べることなのでサプリメントをいくら常用してもそれは食経験にはなりません。(実際にはそのような届け出が非常に多い)

 

・新規食品についての各国の制度のリンクは以下。

Information for Industry on Dietary Supplements | FDA

Novel Food - European Commission (europa.eu)

SFA | Novel Foodシンガポール

Novel foods | Food Standards Australia New Zealand

韓国では食品そのものをポジティブリスト化している。

 

・「生産・製造及び品質管理に関する情報」の欄では「当該製品は公益財団法人日本健康・栄養食品協会から認定を受けたGMP適合製造所にて製造している。」と記載しているが、GMPは最終製品を仕上げる岐阜工場のみで、よりリスクの高い、原材料を作っていた工場では取得されていない。これは優良誤認だと思います。

 

GMPだったら問題はおこらなかった?

今回の事故(?)は製造施設がGMPを採用していれば防げた、という主張がありますが私はそうは思いません。

第8回 食品衛生管理に関する技術検討会

平成30年11月26日(月)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000189357_00005.html

資料1 健康食品製造におけるHACCP導入手引書(HACCPに基づく衛生管理)(案) (PDF:2, 691KB)

https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000407304.pdf

これのp95別添資料2を見ていただきたいのですが、健康食品GMPの認定を行っている日本健康・栄養食品協会 自身が

「健康食品 GMP では HACCP で提示している具体的な「危害要因分析表」や「重要管理点プラン」等の用語及び作成手法については言及していない」

「機能発現を意図して使用する原材料に起因する有害事象の防止には健康食品 GMP のみでは不十分」

と書いています。

ちなみにこの会議に私は出席できなかったのですがコメントを出していて、

議事録には以下のように紹介されています。

***

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000192791_00014.html

○事務局 既にいろいろ御議論をいただいた点にも関連するのですけれども、本日御欠席の畝山構成員から書面でコメントをいただいておりますので御紹介をさせていただきます。

 健康食品は、身体に特定の影響を与えることを目的として使用されるため、一般的食品と比べてリスクが高く、徹底したハザードアナリシスが重要であり、その部分が詳細に記述されるべきです。

 平成17年の厚生労働省通知は「『錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的考え方について』及び『錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドラインについて』」という通知なのですけれども、こちらの厚労省通知では全く不十分ですので、これをHACCP適合と認めることはできないというコメントをいただいております。

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HACCPの最初のステップであるハザードアナリシスにはそれなりの専門知識が必要で、だから一般的食品を扱う中小事業者向けの手引きではあらかじめハザードが示されています。機能性表示食品の届け出情報からは機能性成分以外の情報がわからないことが多いのでハザードアナリシスができないと思うのですが、だれがHACCP適合を判断しているのでしょうね?

 

*なおHACCPに沿った衛生管理の制度化は機能性表示食品制度より後

HACCP(ハサップ)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

令和3年6月1日から、原則として、すべての食品等事業者の皆様にHACCPに沿った衛生管理に取り組んでいただくことになりました

 

✓ベニコウジ色素(食品添加物)と、小林製薬の紅麹原料(食品)は違うもの

2024年3月26日 火曜日

https://foocom.net/secretariat/foodlabeling/24470

森田さんの解説。

食品添加物無添加表示ガイドラインの関係で話を聞いていて気がついたことの一つに、食品添加物使用と書きたくないがために食品扱いのものを使っている会社があるということ。例えば調味料(アミノ酸)は食品添加物だけれどアミノ酸を使って作った〇〇エキスは食品なので、それを使えば原材料の欄に書くことになる。いろいろな食品に紅麹製品(食品)を使う目的がよくわからないのだけれど、もし着色が目的ならベニコウジ色素(食品添加物)を使ったほうが「安全」なのに。

 

✓メディアの責任

メディアの方々は企業や国の責任を追及しますが、そもそもいわゆる健康食品産業の拡大で利益を得ていたのはメディアであることは忘れてはならないと思います。現在、新聞雑誌の広告費のかなりの部分を健康食品が占めていると聞いています。

テレビや新聞、雑誌でいわゆる健康食品の、消費者を欺くような広告を延々と流し続けたことがない媒体はあるのでしょうか?医師が使う処方薬は一般消費者への宣伝は禁止されているため、ロバスタチンよりいい薬が開発されていることを消費者は知らされることがない一方で、誤解を招くような健康食品の宣伝には大きなスペースを使っている。消費者の認識がゆがむのは当然ではないですか。

 

✓別の悪影響

コレステロールが少し高い場合の第一選択は食生活の改善ですが、もし医師に食生活を見直してみましょうと勧められたときに「健康食品」を使うことを選択したらどうなるでしょうか?患者は食生活の改善をしたつもりになり、医師は患者が食生活をみなおしたのだと思い、それからしばらくしてやっぱり薬物治療が必要になったとき、医師はおそらく低用量の薬から始めるでしょう。でも実は既に投薬中と同じような状態だったりするので安全で効果的な治療の妨げになる可能性があるのではないでしょうか?それは薬への反応が悪いとか副作用が強いとかいう形で、健康食品ではない、まともな医薬品の懸念事象として報告されるかもしれません。