[BfR]マイクロプラスチック粒子は脳卒中リスクを増やすか?
do-microplastic-particles-increase-the-risk-for-a-stroke.pdf (bund.de)
19 June 2024
BfRは血管のマイクロおよびナノプラスチック沈着(プラーク)研究を評価
イタリアの研究グループが血管中のプラークにマイクロおよびナノプラスチック粒子(MNP)を検出した(NEJM)。患者の頸動脈内部の血管を狭くしているプラーク検体を調べた。この血管は脳に血液を供給する。プラークはMNPを含むかどうか調べた。検出された粒子の素材や量は次の段階で同定された。
研究者によると患者はMNPが検出されたかどうかで二つの群に分け、その二つを各種生理学的分子生物学的側面で比較した。検体採取から約3年後、患者の死亡や脳卒中、心臓発作があったかについてフォローアップ調査を行った。MNPが含まれるプラーク群が基本的に病気の進行が早かった(心臓発作や脳卒中が多い)
しかしこの研究は関連を記述しただけで因果関係ではない。同定されたポリエチレンおよび塩化ポリビニル粒子がプラーク形成や血管の炎症の原因かどうかは明らかでない。さらにどうしてMNPが血管内や沈着に入ったのかについては何も語られていない。
BfRはしたがって、この研究は関連を記述したものの因果関係は示されていないと結論する。さらにいくつか検討を要する科学的疑問が同定された。
(要旨部分。重要な科学的疑問として、何故二種類のプラスチックしか検出されないのか、それは医療機器由来ではないのか。MNPとコラーゲン量に負の相関があるのは驚き、など)
[CDC]CDCのデータは米国成人7000万人以上が障害をもつと報告することを示す
CDC Data Shows Over 70 Million U.S. Adults Reported Having a Disability | CDC Online Newsroom | CDC
July 16, 2024
障害と健康データシステムDisability and Health Data System (DHDS)の年次更新
今回初めて長期COVIDデータを集めた。定義はCOVID感染前にはなかった症状が3か月以上続く。障害のある人(10.8%)で障害のない人(6.6%)より頻度が高い。
高齢者のほうが障害のある率が高く、65才以上で43.9%
Codex
Codex and the SDGs – input to the High-Level Political Forum | CODEXALIMENTARIUS (fao.org)
15/07/2024
[APVMA]農薬規制ニュースレター
企業向けニュースレター
化学物質レビュー更新
クロルピリホス、フェニトロチオン、ダイアジノン、ジクワット、パラコート、マラチオン、フィプロニル、ネオマイシン
さらに第一世代および第二世代殺鼠剤のレビュー、ネオニコチノイドの再検討を行っている
[FSAI]FSAIは小さい子供のスラッシュアイスドリンクに助言を提供
FSAI provides advice on slush ice drinks for young children | Food Safety Authority of Ireland
16 JULY 2024
FSAIは保護者に対し、小さい子供のスラッシュアイスドリンク摂取を制限するよう助言する。スラッシュアイスドリンクはグリセロールを含み、頭痛、吐き気、嘔吐のような副作用が生じる可能性がある。4才未満は飲まない、5-10才は1日1杯を超えないように。
グリセロールはEUに認可されている添加物で、砂糖の含量を下げるために使われている。スラッシュアイスにシャリ感を与え、一般的に害はないが10才未満の子供が大量に摂取することに懸念がある
[FSA]FSA理事会
FSA Board Meeting — June 2024 (youtube.com)
動画公開
FSA主任科学アドバイザーの年次科学アップデート
Annual Science Update from the FSA’s Chief Scientific Adviser | Food Standards Agency
FSA 24/06/04 - Report by Professor Robin May, FSA Chief Scientific Adviser (CSA).
5 July 2024
一部紹介
・科学助言委員会の詳細レビュー
作業量を減らすために同じような申請をまとめて一回で検討する、他の規制機関の意見を活用する、などの提案
さらに利益相反の対象はお金だけではなく主要研究分野や活動団体のメンバーであるかどうかも含まれることを明確に定義することも提案
最近メディアで一部のコメンテーターが主張している、科学委員会のメンバーには過去に企業から資金提供を受けたことのある人は全て排除すべきという意見には合意しない。そのような資金提供は公開すべきではあるがそのような人を排除することはFSAが最良の科学にアクセスすることの妨げになる
・将来の課題
今後検討が必要になる可能性が高く詳細の検討を勧めるトピック
人工知能、超加工食品、微生物叢改変(プレバイオティクス・プロバイオティクス・栄養サプリメントなどの健康影響に根拠がない)、代替たんぱく質と培養製品
[FDA]病気の調査:Diamond Shruumzブランドチョコレートバー、コーン、グミ(2024年6月)
Investigation of Illnesses: Diamond Shruumz-Brand Chocolate Bars, Cones, & Gummies (June 2024) | FDA
2024年7月16日更新
2024年7月15日時点で28州から69人の病気が報告されている。69人中60人は医療を必要とし36人は入院、関連を調査中の死亡が1
[FDA]FDA、FTCは消費者を違法販売されている模倣デルタ8-THC食品から守るための協力を継続
July 16, 2024
FDA、FTCは人気ナショナルブランドのチップスやキャンディ、スナックを模倣したデルタ8-THCを含む食品を売っている企業に警告文書を発行
2022年の6月にFDAはデルタ8-THCを含む食品を子供たちが間違って飲み込んでしまうことについて消費者に警告した。2021年1月1日から2023年12月31日までの間にFDAはデルタ8-THCを含む製品を摂取した子供と成人の有害事象300以上をうけとっている。そのうち約半分は入院や救急が必要で、約2/3はキャンディやブラウニーのような食品を飲み込んだ後だった。
デルタ8-THCを含む模倣食品は、簡単に買えるので特に懸念である。またデルタ8-THCの合成方法にも懸念がある、不純物や組成の多様性が有害あるいは作用が予想できない成分を作るかもしれない
「スナックやキャンディと間違えやすい食用THC製品を製造販売している企業は、違法行為をしているだけではなく小さな子供をリスクに晒してもいる。子供の安全より利益を優先するような企業は法的対応の可能性がある」とFTCの消費者保護局長Samuel Levineはいう。
(製品の写真と警告文書)
FTCからの発表
July 16, 2024
[EFSA]意見等
・野生のイノシシの多さを高解像度でモデル化する
Modelling wild boar abundance at high resolution
飼料添加物
・食品中テトラブロモビスフェノールAとその誘導体の科学的意見について更新
Update of the scientific opinion on tetrabromobisphenol A (TBBPA) and its derivatives in food
2011年の評価を更新。げっ歯類試験で神経毒性と発がん性がクリティカルエフェクトと考えられたが、入手可能な根拠から非遺伝毒性メカニズムであることが示唆されTDIを設定することが適切と考えた。雄マウスの社交性関心低下をもとにLOAEL 0.2 mg/kg body weight (bw) per dayを参照点として不確実性はデフォルトの100とLOAELとNOAELの3を採用してTDI 0.7 μg/kg bw per dayとした。欧州人の食事からの摂取量はTDIをはるかに下回り安全上の懸念とはならない
(臭素化難燃剤。そういえば最近あまり話題になっていなかった)
論文
-食品の香りの研究が何故宇宙では食事が美味しくないのか説明するのに役立つかもしれない
Food aroma study may help explain why meals t | EurekAlert!
16-JUL-2024
International Journal of Food Science and Technologyに発表された研究は、地球上の普通の環境と、国際宇宙ステーション類似環境でバニラ、アーモンド、レモンの香りの認識がどう変わるかを調べた。54人の成人で調べた結果レモンは変化なし、バニラとアーモンドの香りはISS類似環境で強くなった。ベンズアルデヒドが関与している可能性がある。
-カエルが農薬への耐性を速やかに増やせることを研究者が発見
Researchers find that frogs can quickly incre | EurekAlert!
16-JUL-2024
Aquatic Toxicology。病害虫がそれらを破壊しようとする農薬への耐性を進化させることについては膨大な研究があるが、非標的生物についての研究は少ない。ペンシルベニア西部とニューヨーク東部のアメリカアカガエルの15の集団でカルバリル、クロルピリホス、ダイアジノンへの耐性を調べた。最初に死亡しない量の殺虫剤を与え、次に致死量の殺虫剤を与えると約半分が急速に誘導可能な耐性を示す。
-大規模研究が確認:自閉症の子供のきょうだいは自閉症の確率20%
Large study confirms: Siblings of autistic ch | EurekAlert!
16-JUL-2024
世界中の20以上の大学の研究グループが集まった赤ちゃんのきょうだい研究コンソーシアムによる新しい研究。Pediatricsに発表。
2011年に同様の研究結果を発表していて、以前の論文より大規模で多様になった。
最初の自閉症の子供が女の子だった場合、もう一人の子供が自閉症の可能性は50%以上。
母親の教育レベルが再発率に関連があり、教育レベルが高いと再発率が低い
その他
-Natureエディトリアル
動物実験は必ずしも王ではない:研究者は代替法を探るべき
Animal research is not always king: researchers should explore the alternatives (nature.com)
16 July 2024
技術の進歩は実験に使う動物の数を減らすことができるが、注意深く妥当性を検証する必要がある
Joe Biden大統領が医薬品の候補物質をヒトで試す前にヒトの組織や計算機モデルでもいいことにする法に署名してから1年以上経った。これは1930年代からの規制の基本原則であったワクチンや医薬品はげっ歯類と霊長類でテストする必要があることへの挑戦であった。しかしこの法を知らない研究者のほうが圧倒的に多い。動物実験は特に開発の後半ではいまだに重要で必要である。
世界の動物実験データは不完全だが、一部の国では数が減る兆候がある。
代替法はどんなものでいつ使える?オルガノイドや3D培養など研究者らは革新的方法を探っている。しかしそうしたアプローチが完全に動物実験を代替することは決してないであろう。
代替法の重要な応用分野は免疫である。マウスとヒトでは生物的に違いがありマウスの反応はヒトでは再現できない。そしてアニマルライツの懸念がある。
新しい方法の妥当性検証にも投資する必要がある
(結局両方やることになるだけのような)
-Natureニュース
多くの植物の名前が侮辱的:植物学者が名前を変えるかどうか投票する
Many plant names are offensive: botanists will vote on whether to change them (nature.com)
16 July 2024 By Ewen Callaway
国際会議で研究者らが問題のある名前をどう監視するかも検討する
マドリッドで開催される国際植物学会での投票は公式に検討する初めてのもの。
遺伝子解析の結果一つの種だと思われていたものが複数になるなど既に多くの名称の変更が行われていて、ひどい名前を排除する提案はそれらに比べてればわずかである。
提案の一つはcaffra(アフリカ黒人を侮蔑するのにつかわれた単語)という単語をもとに命名された218種の再命名、もう一つは侮辱的や文化的に不適切な名前の再検討をする委員会を作ること。
-どうしてNYTが今反科学アジェンダを推進しているのか
John Moore, Gregg Gonsalves on June 22, 2024
NYTが最近掲載したCovid-19に関する二つの社説について。一つはウイルスが実験室由来であると主張、一つは右翼紙御用達の科学者による政府の科学者と公衆衛生専門家への批判
(どちらかというと左だったのに右になってびっくり、という感じ)
-マイクロプラスチックとグローバルヘルス
Microplastics and Global Health | Science-Based Medicine (sciencebasedmedicine.org)
Steven Novella on July 3, 2024
公衆衛生上のリスクになる可能性のあるものへの科学に基づいた医学的アプローチとは?
最近健康リスクの可能性リストに加わったマイクロおよびナノプラスチックについて。確実に言えることはそれはどこにでもあるということ。そしてプラスチック汚染は世界の問題でプラスチックは極めて有用な素材であること、いろいろなプラスチックがあってそれぞれ性質は異なるが同じ特徴もあること。
しっかりした根拠がないのはそれらの健康影響。ここで読者に思い出してほしい科学の原則はハザードとリスクの違いである。炎はハザードであるが安全対策でやけどのリスクを減らすことができ、炎を禁止する必要はない。もう一つの重要な概念は予防原則で、これは使い方が難しく、根拠なく恣意的に適用されがちである。リスクがゼロであることが証明できなければ予防原則を採用すべきという主張は反ワクチンや反GMO運動でよく見られる。
害になる可能性のあるものに対する基本的アプローチとして、ハザードに基づいた予防原則的アプローチと、根拠に基づいたリスクベネフィットアプローチの二つにしばしば出会う。SBMでは後者をより合理的で現実的アプローチとして好む。間違った予防原則によりGMOを禁止することはいろいろな問題を解決できる有用な技術を世界から無くすことになる。
そしてもう一つの重要な概念は用量が有害かどうかを決める、ということである。すべてのものが十分高用量ではハザードの可能性がある。でも我々が知りたいのは特定の用量でのリスクである。こうやって安全な基準値を設定できる。
マイクロプラスチックについてはこうしたデータがない。特有の害があるのかどうか、どの量で意味のある害になるのかわからない。したがって予防原則を合理的に採用すれば、「この問題についてさらなる研究が必要だ」になる。
-書評:Paul Offit著「いつ終わるのか教えて」
Book review: “Tell Me When It’s Over,” by Paul Offit - Genetic Literacy Project
Henry Miller, Kathleen Hefferon | July 16, 2024
Offit博士の新著“いつ終わるのか教えて:COVID 神話を解読しパンデミック後の世界を航行するための一人のインサイダーのガイドTell Me When It’s Over: An Insider’s Guide to Deciphering COVID Myths and Navigating Our Post-Pandemic World.”の書評
ウイルスの実験室リーク説を否定。反ワクチンの(でも自分は予防接種している)「悪党科学者」Robert Maloneに一章を割いてデマのビッグビジネスについて議論。そして人類史上初めて政治的志向によって感染症による死亡率が違うという事態になった。
(政府の対応を内部で見ていたOffit先生は信頼できる。)
-SMC UK
英国青少年の超加工食品摂取を調べた研究への専門家の反応
JULY 17, 2024
European Journal of Nutritionに発表された研究が英国十代の超加工食品摂取を調べた
Oxford大学Nuffield集団の健康学部栄養科学者Carmen Piernas-Sanchez博士
この研究はよく行われていて英国青少年集団を代表する。総エネルギー摂取量に占めるUPFの割合は、近年低下傾向だが非常に高い。米国や他の国でも同様の報告がある。将来この種の研究は最も寄与率の高い食品を報告すべきだ
Aston大学名誉学術フェローで英国栄養士会広報栄養士Duane Mellor博士
これは英国の食事栄養調査で集めた食事記録の興味深い解析である。著者らはイングランド北部の11-18才が他の地域より多くUPFからカロリーをとっていると示唆する。さらにより不利な家庭のほうがUPFを多く食べている、おそらく収入と機会が健康的食品へのアクセスを困難にしていることを示唆する。最も興味深いのは、時間とともにUPF由来カロリーが減っているように見えることである。
しかしこの知見は注意が必要で、毎年違う人に記録してもらっているので単なる偶然の可能性がある。また4日間の食事記録から加工食品を分類するのはエラーの可能性が高いことも著者らは明確に述べている。食事記録は加工食品の推定のためのものではなくNOVA分類は英国の食生活むけに作られたものではない。例えば食事記録で「チーズと玉ねぎのパイ」と書いてあれば、健康的ではなくても、手作りであればNOVA分類では超加工ではない。しかしどうやって作ったかの詳細がなければ分類を間違えるし、それは非常によくある。
最後に、この論文は食行動の傾向を報告しただけでそれが健康にどう影響するのかについての情報はない。
(超加工食品って有閑な金持ちが貧しい人たちを見下すための分類、という側面がある。「手作り」って外食を含まないような気がするんだがNOVAの支持者は専門の職人が作ったものは家庭で作ったものと同じとみなしている。)