野良猫 食情報研究所

uneyamaが運営する食品情報サイトです

2024-09-20

[ODS]専門家向けニュースレター

ODS Update:AREDSサプリメントはベネフィットを示し続ける

September 18, 2024

ODS Update: AREDS Supplements Continue to Have Benefits (govdelivery.com)

最近のダイエタリーサプリメント科学

AREDSサプリメントは加齢性黄斑変性に対してベネフィットが続く

2024年7月にOphthalmologyに発表されたAREDS研究のフォローアップの解析

セミナー予告等

 

[FSA]事業者の多くはオンラインで衛生格付けを表示していない

Majority of businesses are missing out on the opportunity to promote their food hygiene rating online  | Food Standards Agency

19 September 2024

FSAは企業が自社の食品衛生格付けをオンラインでも表示することを推奨するキャンペーンを開始した。これはFSAの新しい調査で、FacebookInstagram、オンライン注文機能を備えたWebサイトが広く使用されているにもかかわらず、オンラインで食品衛生格付けを表示している事業者はごくわずかであることが示されたからである。

この調査によると、オンラインで食品衛生格付けを表示している企業は約10社に1社しかない。

 

[WHO]出版物

-JECFA第99回報告書

Evaluation of certain food additives: ninety-ninth report of the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives

19 September 2024

バタフライピー(チョウマメ)抽出物について、毒性データが限られることと市販品の組成の不確実性から安全性評価が完了できなかった

食品添加物としては「安全性が確認されない」ものでも、食品だからと日本では規格もなく使われているhttps://www.rokkou-co.jp/wp/naturalfoodcolor/butterfly-pea/。指定添加物を使った方が「安全」なのに消費者が「天然」を求めるから、と事業者は主張する。消費者は本当にそう考えているのか?情報がゆがんでいるからなのではないか?)

 

[CPSC]CPSCの新しい報告書は保育用品による怪我や死亡の主要因は安全でない睡眠環境であることを示す

New CPSC Report Shows Unsafe Sleep Environments Are Leading Cause of Injuries and Deaths with Nursery Products | CPSC.gov

September 19, 2024

CPSCの報告によると、5歳未満の子どもの保育用品に関連する死亡と怪我は2019年から2021年の間に523人(年間平均174人)

ベビーベッド/マットレス、ゆりかご、ベビーサークル、傾斜した赤ちゃん睡眠用品、赤ちゃん用キャリアが死亡者の76%を占める

注意・仰向けに寝かせる、ベッドには何も置かない

 

[RIVM]ここ数年で初めて食品由来感染が減った

Fewer foodborne infections for the first time in years | RIVM

19-09-2024

2016年以降初めて、前年に比較して食中毒感染が減った。アウトブレイクの数が2022年は1173だったのが2023年は911になり、患者数は4505から3500になった。

同じ食品を食べて二人以上が病気になったらアウトブレイクとされる

報告書

Registratie voedselgerelateerde uitbraken in Nederland, 2023 | RIVM

 

論文

-ビーガンのたんぱく質必須アミノ酸摂取量は適切だが超加工食品も必要

Vegans’ intake of protein and essential amino | EurekAlert!

19-Sep-2024

JAMA Network Openに発表されたブラジルの774人の菜食の男女の研究。

平均的には推奨量のたんぱく質必須アミノ酸を摂取していて加工度の少ない食品を食べているが、プロテインサプリメント大豆プロテイン加工品のような超加工食品の摂取量が少ないとタンパク質量が足りない傾向にある

(加工も肉も悪いことにしたので精進料理に豆腐を使うな、みたいになっている。)

 

-幼児から青少年にかけての偏食は主に遺伝的性質

Food fussiness a largely genetic trait from t | EurekAlert!

19-Sep-2024

Journal of Child Psychology & Psychiatryに発表された英国の16か月から13才の一卵性双生児と二卵性双生児の比較調査。この期間の偏食レベルは比較的安定で7才くらいがピークでその後わずかに減る。16か月での偏食の多様性の60%が遺伝的差により、3-13才では74%に増加。自宅でどのようなものを食べるかのような環境要因は幼児期のみ有意で、個人的経験のような双子に共有されていない環境要因が後半により影響が大きくなる。

(お母さんたちは小さい子供の偏食にあまり悩まなくていいと思うし、無理強いするとその嫌な経験のほうがよくないかも。「なんでも食べる理想的子供」はお母さんの手柄ではなくて生まれつき)

 

Science Volume 385 Issue 6715 September 2024

-表紙はラット

(実験用ではなくてペットの。目が黒い。)

特集は実験用も含むラット全般について主に生態学や歴史の話

 

-エディトリアル

岐路に立つサイケデリック研究

Psychedelic research at a crossroads

Stacey B. Armstrong and Alan K. Davis

p1255

サイケデリックドラッグを治療目的で使うPATの臨床研究について。

MDMA療法がFDAに認可されなかったこと、MDMA療法の論文が倫理上の問題やデータの完全性などの疑義から取り下げられたことなどから問題は明らか。

(一部の人たちが大麻はじめ各種ドラッグの治療効果を過剰に宣伝している)

 

-ニュースを一目で

News at a glance:

猫は液体

Cats are (almost) liquid!—Cats selectively rely on body size awareness when negotiating short openings: iScience (cell.com)

 

-インサイト:専門家の声

抗菌剤危機がくる:抗生物質バブルがはじけそう

BY Andreas J. Bäumler 19 Sep 2024

 

-マイクロプラスチック汚染研究20年―何を学んだか?

Twenty years of microplastics pollution research—what have we learned?

Richard C. Thompson et al.,

Science 19 Sep 2024 First Release DOI: 10.1126/science.adl2746

マイクロプラスチックという用語を使った論文が初めて出版されてから20年、現在わかったこと、定義の精細化、将来の展望をレビューする

この問題に対応して意図せぬ帰結によるリスクを最小化するためには解決法の有効性について明確な根拠が必要

(図が便利。マイクロプラスチックの排出源は多様、圧倒的に多いのは大きなプラスチックが断片化すること、これまで検出された人体部位等

「懸念」の大部分は生態学的懸念(ごみ処理問題)

 

その他

-SMC NZ

マイクロプラスチック汚染による「広範な害」が予測された

'Widescale harm' predicted from microplastics pollution - Expert Reaction - Science Media Centre

20 September 2024

たとえ今新しいプラスチックの製造を止めても、大きなプラスチックが分解するので近い将来マイクロプラスチックは増え続ける

20年のマイクロプラスチック研究のレビューが、2040年までに二倍以上になる可能性のある汚染問題に対応するには規制が必要と結論。

SMCは国内専門家にコメントを求めた

Auckland大学化学部上級講師Joel Rindelaub博士

Canterbury大学物理化学部環境科学部長Sally Gaw教授

Te Aka Mātauranga Matepukupuがん研究センターGeorge Laking准教授

GNS Science有機地質化学研究室科学者でマイクロプラスチック研究者Sebastian Naeher博士

Auckland大学化学上級講師Erin Leitao博士

Auckland大学海洋科学研究所Simon Thrush博士

(コメント略。NZはこのテーマにえらく力が入っている)

 

-Natureニュース

肥満薬のパイオニアが高名なラスカー賞を受賞

Obesity-drug pioneers win prestigious Lasker Award for medical science (nature.com)

By Mariana Lenharo  19 September 2024

ブロックバスター減量薬開発について3人の科学者が賞賛された。次はノーベル賞

Joel Habener, Svetlana Mojsov および Lotte Bjerre Knudsen

 

GLP-1-based therapy for obesity - Lasker Foundation

 

トリインフルエンザは人々の間で拡大しているのか?データギャップが研究者を闇の中に放置する

Is bird flu spreading among people? Data gaps leave researchers in the dark (nature.com)

By Heidi Ledford 19 September 2024

米国で感染動物との接触がない謎のトリインフルエンザの症例がヒト-ヒト感染の不安をもたらす

 

-砂糖はがんの原因ではなく、がんを育てることもない

Sugar doesn't cause - or feed - cancer. (substack.com)

Dr. Andrea Love Sep 19, 2024

この神話は健康不安に付け込んで疑似科学を売り込みたい、がんの生物学を理解しないウェルネスインフルエンサーが広めている

がんに関するデマはとても多く、その一つに砂糖ががんを育てるあるいはがんの原因というものがある。全ての疑似科学同様、このなかには事実のかけらが含まれる。がん細胞が代謝の際に糖を使うという事実である。しかしほとんどの場合事実はそれだけである。

この神話のもとは1920年代のOtto Warburgにちなんで名付けられたWarburg効果と呼ばれる現象の誤解(おそらく意図的な)である

全ての細胞は糖をエネルギー源として使う。これには酸素が必要である。ただ短時間なら酸素なしで嫌気性環境による解糖がおこる。ただし酸素がある時より効率は悪いWarburgはがん細胞が酸素が利用可能な場合でもしばしば嫌気性解糖を使用することを発見した。これがWarburg効果である。

そしてがん細胞は急速に分裂するので他の細胞に比べるとグルコースを早く消費する。このことを利用して放射性フルオロデオキシグルコース(FDG)を投与してPETスキャンを行うことで体内の腫瘍の場所を調べることができる。

これを砂糖ががんの原因である証拠だと間違った主張がされている

ウェルネスインフルエンサー代替医療ラクティショナーは砂糖を避けるように主張するが、砂糖を食べないことではがんを予防できない。

がんについてのデマは公衆衛生を脅かす